岡本達彦先生の教え
私が仲良くさせて頂いている友人の一人が販促コンサルタントの岡本達彦先生です。
岡本さんの著作に「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法―チラシ・DM・ホームページがスゴ腕営業マンに変わる! という、ダイヤモンド社から刊行されている、ビジネス書のベストセラーがあります。
A4一枚、五問のみで構成されるアンケートをお客様に答えて貰うと、集客力抜群の魅力ある広告が簡単に作れるようになる。そんな凄い内容です。
それを読む中で、実はプロになるほど、売れなくなる危険性が増すが故に、ソーシャルメディアでもリアルでも、「お客様の方言」を知って、きちんと話すことが重要である、というお話を解説します。
方言をマスターする重要性
地方などでよく聞くのが、東京などから移住した人間は、なかなか土地に馴染むのに時間がかかるという話。こうなる原因の大きな一つは、東京人の人間性の良し悪し以上に、その人が、その土地の方言を話さない、よそ者だという事実です。
地方のコミュニティにおいて、言語体系を共にしない人間は、どこまで行ってもよそ者。土地の仲間として、なかなか認めてもらえない事は、往々にしてよくあることです。
つまり、ここで重要なのは、同じ日本語で、同じ内容を話したとしても、話す「方言」の言語体系が異なれば、その説得力が著しく落ちるという事。
あなたの話す日本語は、その受け手の土地柄によって、全く意味が変わってしまうという、気が付いているようで、気が付かない事実が、ここにあります。
業界経験が長いと売れなくなる?
さて、岡本先生の話で面白かったのが、業界経験が長くなってベテランになると、逆に会話がお客様の心に届くかなくなり売れなくなることがあるという話。
ビジネス人は、その業界や商品・サービスなど、商売の事を毎日のように考え、情報も仕入れ、プロになっていきます。この当たり前の成長が、実は問題の発生源。プロにとって当たり前のこと。しかし、素人である、お客様にとって、それは当たり前ではない。この事実に気が付かなくなる、という問題です。
また、長年業界にいる事で、独特の慣習から、業界用語などを身に付け、それを自然に多用するようになる。つまり、お客様とは、全く別の方言を、気が付かないうちに、習得しているのです。
そして、全く言語体系が異なる、素人のお客様と、プロ化して別の方言になっていることに気付いていない営業マン。この二人が、一生懸命に商談をしても、なかなか上手く商談が進むはずがありません。
これは、どっぷり津軽弁の人が、どっぷり鹿児島弁のお客様に、一生懸命に営業をしている。そんな光景です。これは売れるどころか、下手をすると、話の真意すら伝わっていない可能性すらあります。
実際、東京から来たIT系の業種の営業マンが、地方の中小企業の経営者に対して、自社商品の説明をしている風景は、これに近いものがあります。
地方の中小企業の社長達に、「ソリューション・コアコンピタンス・ガバナンス・アサイン」などなど、『IT方言』を連発する営業マンを見ると、本当に売る気があるのか、とすら思います。
お客様に合わせた方言で話さなければ、それが合理的な説明であったとしても、お客様からの理解を得ることはできません。
方言は言語体系だけではない
それぞれの、地域の方言というのは、とても面白いものです。ただ単に、単語が違うだけでなく、その土地の風土から培われた、住民の思考や雰囲気などから培われたのが方言です。
そして、方言の持つ、リズム感やスピードなどは、簡単によそ者がマスターできるものではありません。
関西人でもないのに、偽物の関西弁を話していて、関西人にそれがバレてしまい、関西人の反感をかう。そんな話も、よくありますよね。
しかし、ソーシャルメディアでは、お客様の属性と、その実際の会話を見ながら、よく出てくるキーワードや、その思考傾向を知って、それに合わせていくことは、話し言葉の方言の習得と比較すれば、そんなに難しいことではありません。
例えば、地方の中小企業の社長さん達に話す際は、横文字の専門用語は極力使わない。そして、常に、数年後の売上ではなく、今期の売上確保を考えている社長さんに、その商品を使うことにより、売上が上がる理由を、的確に分り易く話す。
これが、地方の中小企業の経営者の言語体系と思想に基づく、方言になるのです。
あなたは「俺のナイトメア」になっていないか
また、もう一つ非常に面白い事例があります。
インターネット上にある、若者のストリートファッション誌のキャッチコピーを集めたまとめ。これが、凄い事になっています。一例を上げると…。
- ストリートで死ぬ為に生まれてきたのかもしれない。
- ガイアが俺にもっと輝けと囁いている
- 今宵は俺のナイトメアで酔えばいい!
こんな感じで、一般人から見れば、思わず笑ってしまうようなキャッチコピーのオンパレードなのですが、ストリートファッション命という若者たちにとっては、笑えるどころか、これが共感を感じる「方言」であるのは、動かし難い事実。所変われば、方言も変わる、です。
また、地方の中小企業の社長から見れば、よく意味が分からないという意味では、やたらとIT企業の人達が使う横文字の数々も、ストリートの「俺のナイトメア」と、実はそう大して変わらない、特殊な方言なんです。
方言を知るには、お客様から聞け
それでは、お客様の使っている「方言」に、自分の方言を矯正する為にはどうすればいいのでしょう。それは簡単です。お客様の言葉を、そのままズバリ聞くこと。
冒頭に書きましたが、販促コンサルタントの岡本達彦先生が「A4」1枚アンケートを取る際に、気をつけるべき要点として述べているのが、お客様の言葉をそのまま聴取することです。
聞き手が、自分の解釈で、お客様の言葉を要約した瞬間、それは聞き手の方言になってしまい、お客様の共感を得られる、方言では無くなってしまいます。お客様の言われた、その言葉通りに聞き取る。それがお客様の方言を知る、最高の方法なのです。
詳しくは岡本先生のこちらの書籍を参考にしてください。
お客様を知る
FacebookやTwitterなど、ソーシャルメディアの発達により、企業がお客様と直接に繋がる時代がやって来ました。しかし、お客様を無視した、企業側の独り善がりな関わり方しかできなければ、その実現は不可能です。
企業は、お客様が何を考え、何を話しいるのか。そして、どうやって対話をすれば、お客様は企業の声に耳を傾けてくれ、信頼が得られるのか。そこを、きちんと知らなければなりません。
小学校の朝礼の校長先生のように、大上段から、偉そうな事を話しても、お客様の心には届きません。きちんと、校庭の土に体育座りで腰をかけ、お客様と車座になり、近い距離で対話して、お客様の言語体系・思想・雰囲気に合わた「方言」で相互理解を深めながら、プロとして示唆に富む内容を話して共感を積み重ねる。
まずはお客様を知ることから、きちんと始めてみては如何でしょうか。
今回のまとめ お客様を知り方言で話し、共感を得て、繋がる